アフターコロナを推知しての所感

 皆様にはお変わりなくお過ごしと拝察いたします。

 新型コロナ感染防止対策として、太祠での神祭事は首都圏内の教導職者による奉仕で斎行していますよって皆様には全国各教会所の御神前でご一緒に祈りを捧げて頂いています。

謹みて、今上陛下と皇室の弥栄をお祈り申し上げ、教信徒皆様のご壮健を願い、さらに、この度のコロナの終息、豪雨災害からの一日も早い復興、世界中の平安を心から大神様にお願い申し上げています。重ねて日々、コロナの感染防止や患者さまの治療に携わっている医療従事者の方々のご苦労に心を寄せご無事と安全を祈ります。

今より丁度、四百年前の元和六年(一六二〇年)七月江戸につき倒し(コレラ)が蔓延し多数の死者が出た折、御開祖角行様は「おふせぎ」を市民に配り人々をお救けになりました。このたび、ご直伝の「おふせぎ」を多くの皆様に頒布いたしました。教会教信徒の皆様には 御開祖角行様の御守護のもと、コロナの脅威に屈することなく、感染防止に心掛け、健康な毎日をお過ごし下さい。

省みるに今から100年前、世界をスペイン風が襲いました。

その時の世界はどうだったでしょうか。第一次世界大戦(1914〜1918)後、国際連盟(1920.1.10)が設立。さらには、第一次世界大戦からの過剰生産が原因となり3月には世界恐慌が発生。日本でも影響は大きく、この年に、日本最初のメーデー。普通選挙の要求運動。平塚らいてう、市川房枝らによる新婦人協会の結成など、大正デモクラシーといわれる民主化運動が活発になったときであります。経済活動では蒸気、ガスエネルギーから電気エネルギーへの変換が行われました。また1619年オランダのKLM、オーストラリアのカンタス航空などが設立され、海路から空路へ移動手段が革新。そしてアメリカのKDKA局からラジオの民間放送が開始され広域に多数の人々へリアルタイムで情報が伝えることが可能になりました。地球グローバリズムすなわち新世界秩序の考えが提称されたのもこのころです。

100年後の現在はどうでしょうか?そして近未来は?

今もなお覇権を争う紛争は絶えず、満足を知らない生産活動は地球環境を破壊しながら世界中の富が一握りの裕福層に集約され貧富の格差拡大がピークな結果となっています。

AI人工知能の発達、ITや5Gによる通信情報の網羅。それによるデータセンターの電力需要の増加は拡大し「2030年までには、全世界の電力要件の最大13%はデータセンターで消費されるだろう。そのためには、持続可能な電力供給が必要だ。」(E.ONの取締役Karsten Wildberger氏)との見解がなされています。故に、これからは化石エネルギーから自然、バイオマス、再生エネルギーへの転換が必須です。私たちの生活でも、働き方改革が提案され、人間らしく生きることやスローライフが見直されています。すなわち、これまでの価値観からの脱却、さらには文明から文化への変革が始まったと考えます。

実は、ウイルスとは、そのような時代の大変革時に必然的に出現するものではないのでしょうか。「善悪、姿」は別としてこの度の新型コロナウイルスは、神仏や自然への恐れを知らず、力と金で地球を把握し、ひたすらに巨大になることのみを正義とした私達の増長と傲慢。顧みられない多くの犠牲を生じながらも地球の摂理に生かされていることへの感謝と思いやりを忘れた現代人への警告のため、権現した憤怒明王なのかも知れません。さらにウイルスは事象を起こすのではなく、潜在的に起ころうとしている変革をスピードアップ・後押しする働きがあるのだと考えます。実際、5Gやテレワーク・オンライン会議や電子マネーは急速に生活に浸透していますよね。LGBTや肌の色での差別行為こそ慢侮される行為です。価値観の多様性を受け入れて連帯を強めることが人類をさらに進化させるでしょう。地球倫理の確立を切望します。そして私達には「アフターコロナ」を生きるために豊かな想像力が求められているのです。いよいよ、私達の日常は大変化を起こし「これまでの常識はこれからの非常識、これまでの非常識はこれからの常識」となると期待します。

百年に一度の大変革の今、私達は一旦、立ち止まり大きく深呼吸をすることも大切です。富士山へ登る時と同じです。ときどき休憩をとり眼下を眺め、まずは体内の空気を吐き切るのです。吸うのではなく、吐き切ることが大切なのです、そうして、只、力を抜くと有難いことに神様は自然と空気を躰に授けてくださいます。そして新たな気持ちで頂上を目指して一歩づつ進めば良いのです。

日本でのコロナの感染被害は他国にくらべ、軽症であることはご承知の通りです。感染防止には何よりも手洗いが必須と言われます。私達は手を洗うことは「心を清める」と同じと考えますので手洗いに違和感はありません。また家では靴を脱ぐ、お箸で食事をいただく習慣などなど、私達は今回、日本文化に助けられたと言えます。「文明」を追いかけてきた私達ですが、今一度立ち止まり改めて「文化」を見直す必要があるでしょう。

太祖参神さまが創造された、この世界で、参神さまの御守護を授かり「恙無く過ごせる有り難さ。日々無事で息災であることがどんなに有難いか」をコロナの脅威に怯えることで、私達は教わりました。そして先人から伝わる文化がいかに重要かを再認識しています。

コロナの影響で暗くなりがちな職場や家庭でも大神様のお護りをいただいていることを強く心の支えとして、周りの人々に対し常に「優しく明るく」あってほしいと願っています。どうか御神前を照らす灯明のごとく世の一灯となって下さい。小さな一灯は扶桑の道を歩む皆様で心を合わせることにより天にも届く大篝火(おおかがりび)となり世界平和の標(しるべ)となると確心しています。

さて、いよいよ来年は冨士道御開祖角行様御生誕四百八十年の嘉節を迎えます。皆様の御奉賛とお力添えを頂いています冨士山元祠修理の事業はコロナの影響でいささか遅延していますが、最大の努力を傾倒して取り組んでいます。立教の聖地として、先輩先人の皆様が大切に守って来て下さった元祠を大切に伝えて参ります。

私達は、これからも富士信仰の伝統を守りつつ、祈りの本道を歩む覚悟です。ひたすらに一条の祈りを捧げ、皆様と共々に測り知れない尊いむすびのもと「天地平安・萬人安福・他のために祈る斯の道」に尚も一灯を掲げ更に一歩を進めさせて頂きたいと祈り念じ申し上げます。

                        令和2年8月31日 

冨士道第十二世神道扶桑教第六世管長 宍野 史生

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